疲れた身体を癒してくれるお風呂。
一日の終わりに湯船に浸かって温まるとほっとしますよね。
そんなお風呂ですが、実は温度によって身体に与える影響が違ってくるんです。
この記事では、お風呂の温度が身体に与える影響についてご紹介します。ぜひ快適なお風呂タイムの参考にして下さいね。
「温熱作用」で身体を温める
お風呂に入ることの第一の効果は、身体が温まることです。これを「温熱作用」と呼びます。
お湯の温熱によって、身体の表面に近い血液が温められます。
実際に温かいお湯に接しているのは皮膚の表面だけですが、皮膚組織には多くの血管があります。血管で温まった血液が循環して全身に届けられることによって、身体の内側まで温まるのです。
血液は心臓のポンプ作用で全身を巡りますが、一回りして戻ってくるのは平均で一分半ほどだと言われています。
40度前後のお湯に10~15分ほど浸かると、体温が約一度上がることが分かっています。体表部分だけでなく、内臓など身体の深部の温度も同じです。
体温維持が大切な理由は?
なぜ身体を温めることが大切なのでしょうか。
それは、基礎代謝、体内の酵素活性、免疫機能などの重要な生理機能が体温により左右されるからです。
ヒトの正常な深部体温は約37度、腋窩(脇の下)で測った体温は約36.3度だと言われています。
もしこれよりも1度低かったとすると、身体には様々な悪影響があります。
体温が低いことによる影響
体温が低いとデメリットがありまくりですが、具体的に並べてみます。
- 基礎代謝が下がり、消費カロリーが減る→太りやすくなる
- 免疫力が下がる→風邪や感染症にかかりやすくなる
- 体内酵素の働きが低下する→栄養の消化・吸収が効率よく行われない、エネルギーの産生量が減る
- ミトコンドリアが衰退する→細胞のがん化を引き起こす可能性がある
「低体温は良くない」という情報を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
体温を適切に維持することは、健康の維持や病気の予防にも大きな関係があるのです。
関連記事:女性の悩み!冷え性、むくみ、生理痛・PMSに効果的な入浴法って?
血流が上がり、健康になる
お風呂に入ると、血の巡りが良くなりますよね。
足湯など、一部を温かいお湯に浸けただけでも身体全体が温まります。お風呂に入ったことによって血流が上がったことが原因です。
この「血流」も様々な健康情報に登場しますよね。
血流が改善されると「妊娠しやすくなる」「冷え性が治る」「頭痛が良くなる」など身体にいい効果がある、とされています。
血液中には赤血球などの血液成分だけでなく、「酸素」「栄養素」「水分」「ホルモン」「免疫物質」など身体にとって重要なものがたくさん含まれています。
また、老廃物を排出するにも血液を介します。
血流が良くなると、必要な物質が身体の端までしっかり届けられます。
血流を上げると色々な不調の解決につながるのはこのためだと考えられているのです。
どうしてお風呂で血流が上がるの?
では、どうしてお風呂に入ると血流は上がるのでしょうか。主な理由は2つあります。
温熱により、自律神経が刺激されるため
お風呂の温熱作用によって、自律神経が刺激されます。お風呂の温度によってメカニズムは異なるのですが、
熱めのお湯に入ると心拍数が上昇する→一時的に血流が上昇する
ぬるめのお湯に入ると血管が拡張する→末端まで血液が届きやすくなる
これらが組み合わさることで、血液の巡りが良くなります。
静水圧作用による物理現象のため
お風呂に入ると、湯船に入っているお湯の重さの圧が全身にかかってきます。これは「静水圧作用」と呼ばれますが、この効果によって
- 体表の静脈に直接水圧がかかり、静脈血が心臓に押し戻される
- 脚や指先など、普段重力によって血流が悪くなりがちな場所の血液循環が良くなる
- 水圧のマッサージ効果で血液の流れが良くなる
といったことが起こります。
自立神経に働きかけつつ、物理的に血流を改善するという別方向からのアプローチが期待出来るのです。
自律神経の作用をお風呂でコントロール
「自律神経」というキーワードが出てきましたね。
これも健康情報ではよく聞く言葉ではないでしょうか。
前述の通り血流を上げるために重要な役目を持っていますが、他にも健康には欠かせない色々な身体の働きをコントロールしているのがこの「自律神経」なのです。
お風呂と自律神経には深い関係があります。詳しく見ていきましょう。
交感神経と副交感神経
そもそも「自律神経」とは、「無意識に身体の機能を司る(=自律する)」機能を持つ神経のことです。
例えば、心拍数の上昇は自律神経の働きによって起こります。意識して心臓の動きを早めることは出来ませんよね。
自律神経は、さらに「交感神経」と「副交感神経」の2種類に分かれます。
「交感神経」は、身体の動きを活発にするための神経と考えて差し支えないでしょう。緊張・闘争・活動・昼間の動きなど、エネルギーを消費する働きをします。
逆に「副交感神経」は身体をリラックスさせるための神経です。
筋肉を緩めたり、消化活動を活発にするなど、夜間・休養・エネルギー貯蔵のための働きをします。
これら2つの自律神経がバランスを取りながら、私たちの身体の作用は維持されています。
お風呂と自律神経の関係
お風呂の温度は自律神経の働きに大きく影響すると考えられています。
ポイントとなるのは「42度」。
個人差はありますが、この42度を境に優位になる自律神経が変わると考えられているのです。
42度以上(熱め)のお湯に入ると、「熱い」ことに身体が緊張して交感神経が優位になることが分かっています。
血圧・脈拍数が上がり、筋肉が緊張します。
逆に40度くらい(ぬるめ)のお湯に入ると、心身のリラックス効果が感じられるようになります。ぬるいお湯につかっていると、ついウトウトしてしまったり、お腹が空いたことはありませんか?それは副交感神経が優位になったからなのです。
たった2度程度の違いでも、身体にとっては大きな差があることがわかります。夜寝る前にお風呂に入るのであれば、
- 40度以下のぬるめのお湯に浸かる
- 15分ほど湯船に入る
- 肩まで全身お湯につかる
という条件での入浴がおすすめです。
副交感神経が優位になり、睡眠の質も良くなります。
高齢者は熱いお風呂に入ると危険?
日本人は、外国人と比べても熱めのお湯を好む傾向にあるようです。日本のお風呂の温度の平均が40~42度なのに対し、欧米では38度程度だそう。
特に高齢者に「熱いお風呂が好き」という方が多い傾向があります。
これは、温度に対して感覚が鈍ってきていること、熱いお湯での入浴習慣に慣れていること、などの理由が考えられます。高齢者でなくても「熱めのお湯は気分がさっぱりする」という方もいますよね。
確かに熱いお湯での入浴も気持ちがいいものですが、ちょっと注意したい事があります。
前述の通り、熱めのお風呂に入ると血流が上がります。
血流が上がるのは身体にいいことではありますが、急に血流が上がった場合には血管に負担がかかることになります。
勢いよく血液が流れて血圧が上がり、心臓や脳にも負担となってしまうのです。特に動脈硬化や高血圧など、指摘を受けている場合はさらにリスクが高くなります。
最悪の場合、脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性があるのです。
特に寒い冬は、脱衣所との温度差が激しいので危険です。これは「ヒートショック」と言われ、実際に冬場にお風呂で事故が起きやすい、といった統計データも存在します。
(消費者庁の参考URL:http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/160120kouhyou_2.pdf)
身体への負担を和らげるためには、あまり熱過ぎるお湯は危険です。
お湯の温度だけでなく、冬は脱衣所を暖房で温める、浴室暖房を使う、熱いシャワーの湯気で浴室を温める、湯船に浸かる前にシャワーで身体をある程度温めてから入る、など注意するようにしましょう。
子どものお風呂の適温は?
子どもは大人と比べて皮膚が薄く、お風呂の温度や水圧に敏感です。
また、体温調節機能も未熟です。体表面積も小さく基礎代謝も高いので、同じ温度であっても大人より「熱い」と感じる傾向にあるようです。
熱が身体にこもってのぼせてしまう原因になるので、大人よりも短めに湯船に浸かるように心がけましょう。特に新生児は、沐浴のお湯の温度に気をつけましょう。
季節にもよりますが、38~40度くらいになるように調節してあげるといいでしょう。
まとめ
お風呂の温度と身体の働きの関係をご紹介しました。
お風呂で身体を温めることによって健康維持に必要な機能がよく働き、自律神経に作用して血流の改善やリラックス効果も期待出来ます。
微妙な温度の違いでも、身体にとっては大きな差となるようですね。
一言で「温度」と言っても、高齢者や子どもなどはそれぞれ注意するポイントがあります。自分にとって最適な温度のお湯に浸かって、健康増進・リラックス効果を得られるようにしましょう。